アニメの作画崩壊のことを「ヤシガニ」と呼ぶファンは少なくありません。
アニメ『ロスト・ユニバース』で起きたヤシガニ事件やヤシガニ三部作など、2000年前後の作画崩壊にまつわる話をまとめました。
ヤシガニがアニメの作画崩壊を意味する理由
ヤシガニがアニメの作画崩壊を意味する理由について解説します。
ロスト・ユニバース『ヤシガニ屠る』事件
『ヤシガニ屠る』という単独スレッドも5ちゃんねるに立つほど、『ロスト・ユニバース』の作画崩壊は話題になりました。
アニメの作画崩壊がヤシガニと呼ばれるようになったのは、アニメ『ロスト・ユニバース』の第4話『ヤシガニ屠る』に由来します。
『ヤシガニ屠る』は壊滅的な作画クオリティをテレビで放送。全話制作後に大幅なリテイクが発生する事件になりました。
『ロスト・ユニバース』は作品の作画が低調なアニメでした。
- オープニングのアニメが未完成の状態で放送
- 雑なデッサンや作画
- セル画パートの破綻
当時、原作小説が未完成でアニメもシリーズ化を見据えた内容でした。しかし、あまりのできの悪さを受けて続編は制作されずじまいとなりました。
ただし、デジタルアニメとセルアニメを組み合わせた画期的なアニメという側面もあります。CGパートはDoGAが担当しました。
ヤシガニ事件の原因
ヤシガニ事件を受け、『ロスト・ユニバース』全話制作終了後に修正作業が行われました。比較動画をご覧ください。
さて、なぜヤシガニ事件が起きてしまったのでしょうか?低予算とスケジュールミス、上層部との軋轢など、さまざまな原因が重なっているようです。
低予算で制作
『ロスト・ユニバース』は低予算で制作されました。噂によると同時期のアニメ『カウボーイビバップ』の8分の1しか予算がなかったそうです。
低予算アニメあるあるですが、『ロスト・ユニバース』も1話単位でセル画を韓国(SAN HO STUDIO)に外注していました。作画監督不在の同スタジオでは技術力の低さや手抜きの状態で納品され、修正する余裕もなかったのが原因だと言われています。
SAN HO STUDIOから納品されたセル画は、すでに2話・3話の修正前の作画は4話並の作画崩壊だったそうです。
逼迫した納期やスケジュールミス
『ロスト・ユニバース』の渡部監督は、上層部との軋轢や低予算が主な原因だと主張しています。しかし、制作会社であるイージーフィルムの渡部監督のミスも少なからずあったようです。
渡部監督の遅れもあり、4話のキャラ・メカ・美術設定のすべてが出来上がらなかったと言います。これが作品の制作全体に波及したと考えられます。
イージーフィルムの下請け制作会社であるリップルフィルムが悪く言われています。しかし、リップルフィルムはイージーフィルムの制作遅れに見かねて協力したようだという話も見られました。
ちなみに、イージーフィルムはアニメ『ワイルド7』でも全編ヤシガニ状態で制作。制作会社の体質に問題もあったのか、その後倒産しました。
最大の問題は、当時のアニメ制作会社各社が利益先行型の企業体質だったことだと言われています。バブル崩壊後の不況とアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の大ヒットがもたらした時代背景かもしれません。
ヤシガニ三部作と呼ばれる作画崩壊アニメ
2000年前後に公開された作画崩壊アニメのことを総称し、「ヤシガニ三部作」と呼ばれることがあります。同時期のアニメ『ガンドレス』『学園都市ヴァラノワール』のことも紹介します。
ガンドレス
1999年公開の日韓合同のアニメ映画『ガンドレス』は、4億円と潤沢な予算で制作することが決定しました。
しかし、請負元のサンクチュアリがスタジオジュニオに対し、2億円以下の予算で制作を丸投げ。その結果、アニメの制作管理が破綻し、『ガンドレス』はほぼ未完成のまま劇場公開される事件が起きました。
『ガンドレス』の監督を務めた矢田部勝義氏は、脚本の完成度の低さや途中でスタッフが離脱したことをのちのインタビューで回想。制作初期の段階でつまづいたと述べていました。
学園都市ヴァラノワール
2002年に発売したOVAアニメ『学園都市ヴァラノワール』。PS2のゲームの移植版として注目されました。
背景すべてがしょぼいフル3D、枚数を節約した動かないアニメーション、モブキャラのコピペ、ゲームの使いまわしオープニングなど、作画崩壊のシーンが多数見られます。
また、稚拙な脚本によりキャラクターの魅力まで半減。低レベルなアニメはヤシガニ三部作と呼ばれるほどの作画崩壊を引き起こしていました。
アニメ『ロスト・ユニバース』の話数・スタッフ一覧
話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 放送日
(1998年) |
第1話 | 光刃(ひかりのやいば)輝く | 山田靖智 | 渡部高志 | 渡部高志 | 宮田奈保美 | 4月3日 |
第2話 | 女神翔ぶ | 山田靖智 | 遠藤克己 | 山内富夫 | 石川慎亮、大澤正典
加藤洋人、宮田奈保美 毛利和昭 |
4月10日 |
第3話 | 厨房踊る | 高山治郎 | 牧野滋人 | 則座誠 | 宮田奈保美、矢米泰三 | 4月17日 |
第4話 | ヤシガニ屠る | 植竹須美男 | 高山英樹 | 高山英樹 | 前島光 | 4月24日 |
第5話 | 光炎轟く | 佐藤勝一 | 毛利和昭 | 毛利和昭 | 佐藤孝 | 5月1日 |
第6話 | 駄天使疾る | 玉井豪 | 鈴木行 | 日下部光雄 | 永島明子 | 5月8日 |
第7話 | 棋士まみえる | 山田靖智 | 渡部高志 | 加藤洋人 | 石川慎亮、加藤洋人、小岩雄之、宮田奈保美 | 5月15日 |
第8話 | ニーナ窮す | 高山治郎 | 高山英樹 渡部高志 |
佐藤英一
土屋浩幸 |
伊東克修、松本卓也 | 5月22日 |
第9話 | 厠消ゆ | 植竹須美男 | 開木菜織 | 則座誠 | 宮田奈保美 | 5月29日 |
第10話 | 流浪決する | 山田靖智 | 渡辺純央 | 日下部光雄 | 佐藤多恵子、高田三郎 | 6月5日 |
第11話 | 朋友散る | 佐藤勝一 | 日下部光雄 | 山崎友正 | 柳瀬雄之 | 6月12日 |
第12話 | 涙雨果てる | 玉井豪 | 開木菜織 | 加藤洋人 | 伊東克修、加藤洋人 | 6月19日 |
第13話 | 追憶巡る | 植竹須美男 | 渡部高志 | 則座誠 | 宮田奈保美 | 6月26日 |
第14話 | 恐怖ささやく | 高山治郎 | 奥田誠治 | 土屋浩幸 | 柳瀬雄之 | 7月3日 |
第15話 | 悪夢現る | 玉井豪 | 奥田誠治 | 御厨恭輔 | 浅沼昭弘、伊東克修 永島明子 |
7月10日 |
第16話 | ミリィ欲する | 佐藤勝一 | 日下部光雄 | 日下部光雄 | 佐藤多恵子 | 7月17日 |
第17話 | 警部ブッ飛ぶ | 山田靖智 | 佐藤英一 | 加藤洋人 | 李鍾玄 | 7月24日 |
第18話 | 無頼流れる | 佐藤勝一 | 奥田誠治 | 津田義三 | 伊東克修、永島明子 三宅雄一郎、柳瀬雄之 |
7月31日 |
第19話 | 闇誘う | 植竹須美男 | 渡部高志 | 則座誠 | 宮田奈保美 | 8月7日 |
第20話 | 想い届かず | 玉井豪 | 日下部光雄 | 日下部光雄 | 佐藤多恵子 | 8月14日 |
第21話 | 氷原燃える | 山田靖智 | 奥田誠治 | 溝口雅彦 | 菅井嘉浩、加藤洋人 | 8月21日 |
第22話 | 宿命紡ぐ | 山田靖智 | 開木菜織 | 土屋浩幸 | 伊東克修、宮田奈保美 | 8月28日 |
第23話 | 阿修羅来たる | 高山治郎 | 奥田誠治 | 則座誠 | 松本卓也、宮田奈保美 | 9月4日 |
第24話 | 乙女還る | 植竹須美男 | 日下部光雄 | 日下部光雄 | 佐藤多恵子 | 9月11日 |
第25話 | 聖魔相撃つ | 玉井豪 | 渡部高志 | 佐藤英一 | 加藤洋人 | 9月18日 |
第26話 | そして…光刃輝く | 山田靖智 | 渡部高志 | 渡部高志 | 宮田奈保美 | 9月25日 |