1995年、青森県の4人の若者が偶然出会ったことを機に結成されたバンド、スーパーカー(SUPERCAR)。

多数のバンドマンに影響を与えたスーパーカーの活動期間約10年のうち、主に『スリーアウトチェンジ』内の楽曲を中心に、彼らとシューゲイザーについてこねくり回してみます。

(今回の記事中、スーパーカーのメンバーは愛称ですがご容赦ください)

 

スーパーカーとは

1995年、フルカワミキ(Ba&Vo、古川美季。ミキちゃん)がクマのイラストを描いたメンバー募集を八戸市内の楽器屋に貼ったことがきっかけで結成。

ゴリゴリのいかついバンドマンが来たらやってなかったと、彼女はインタビューで話していました。

そんな彼女と、音楽情報が少ない青森でザ・ジーザス&メリーチェイン(The Jesus & Mary Chain、以下ジザメリ)やボアダムスなどを聴いていた中村弘二(Gt&Vo、以下ナカコー)らが、奇跡的に出会ったわけです。

メンバー

中村弘二(Gt&Vo)ill、NYANTORA、LAMA

石渡淳治(Gt、以下ジュンジ)いしわたり淳治名義でプロデューサー・作詞家として活動中

フルカワミキ(Ba&Vo)

田沢公大(Dr、以下コーダイ)aM

ディスコグラフィー(アルバム※一部企画盤含む)

スリーアウトチェンジ(1998年)

JUMP UP(1999年)

OOKeah!!(1999年)

OOYeah!!(1999年)

Futurama(2000年)

HIGHVISION(2002年)

ANSWER(2004年)

初期スーパーカーのジャンルはシューゲイザーの文脈で語るべきか

スーパーカーはデビュー当時からシューゲイザーと呼ばれることがありました。

時々、シューゲイザーではないという意見もありますが、彼らはこのジャンルでくくるべきバンドなのでしょうか。

解散後の2005年夏に聴き始めた後追いリスナーの意見を書きます。

初期スーパーカー=グランジ?

初期の楽曲を聴く限り、スーパーカーはグランジやノイジーなパンクのテイストを強く感じます。

たとえば、『スリーアウトチェンジ』内の『Greenage』は、ジザメリ色強め。

また、シングル『Lucky』収録の『RIGHT NOW』はモロにDinosaur Jr.です。

ナカコーがジザメリ派?

MyBloodyValentineを引き合いに出されたナカコーが「俺、ジザメリ(The Jesus & Mary Chain)派なんで」と、暗にシューゲイザー派ではないと否定していたフシもあるようです。

情報ソースは2ちゃんねるの書き込みだったはずなので真偽はわかりません。

ジュンジは、ギターがうるさいというスタンスなら何でもいいという感じでした。

中期のほうがシューゲイザー色が強い?

むしろ、中期の『White Surf Style.5』や『Playstar Vista』のほうがシューゲイザーっぽいかもしれません。

エレクトロニカに接触した結果、バンド色が薄れてシューゲイザー化が進んだ印象です。

男女混声ボーカルだからシューゲイザーだ

これはオルタナティブ・ロック全般に共通するので、あまり強い意見ではありませんが、ナカコーがテレキャスターカスタム、ジュンジはジャガー(のちにモズライト)です。

割とフェンダーびいきなバンドなので、シューゲイザーっぽいというこじつけも成立するでしょうか。

一部の楽曲がシューゲイザー色強めだ

初期スーパーカーはから男女混声ボーカルや気だるい歌い方、ノイズギターが特徴でした。

実際、『スリーアウトチェンジ』内はシューゲイザー的な曲の比率も多かったように感じます。

たとえば、『Trip Sky』や

『My Way』など、

みずみずしいギターサウンド、ギターポップ的なテイストなど、シューゲイザーと考えるのも自然でしょうか。

ジャンルをシューゲイザーとするのは妥当か

今回の記事を書くにあたって、初期スーパーカーのメディアでの打ち出し方や時代背景を考えてみました。

たとえば、ナンバーガールはもう少しアメリカンなオルタナティブ・ロック、くるりや中村一義はマルチなシンガーソングライターという印象です。

そのため、彼らとの対比でスーパーカーがシューゲイザーと呼ばれたのかもしれません。

 

おそらく、管理人が「初期スーパーカー=シューゲイザー」と呼ぶのに違和感を覚えた理由は、『スリーアウトチェンジ』がコンセプチュアルではないからだと思います。

MyBloodyValentine『Loveless』くらい同じ音、同じ世界観ならシューゲイザー的だと感じるのですが、同作はもっとカラフルなアルバムです。

それだけ、ナカコーの作曲センスが優れていて、幅広いジャンルを吸収していることでしょうか。

cream sodaとChapterhouse

初期スーパーカーは、10代のうちから数百曲以上書いてきたナカコーの作曲センス、ジュンジの歌詞、ミキちゃんのロリータボイスが主な魅力だったと思います。

デビュー曲の『cream soda』を聴いてみましょう。

みずみずしいギターリフとノイズギター。

ご紹介した動画はライブでボーカル大きめですが、CDではもっとギターの主張が強いです。

 

時々、Chapterhouse『Breather』と比較されることもあります。

『cream soda』のギターリフは、おそらくシューゲイザー好きな多くのギタリストが練習したはずです。

いまだに、たまにライブハウスでこのフレーズを弾いているのを耳にします。

luckyとDrop nineteens

続いてはスーパーカー至上最高の名曲と言われることも多い『Lucky』です。

デーブ・スペクターがMCを務める架空の歌番組という設定のPVです。

日本のシューゲイザーバンドにおけるアンセム的な一曲ではないでしょうか。

 

管理人は音の世界観がDrop nineteensの『Winona』に近いと思っています。

Drop nineteensは、1990年代前半に活動していたバンドです。

イギリスのバンドが多いシューゲイザーですが、珍しくアメリカ発ということもあって、ややカラッとした印象があります。

ちなみに、曲タイトルは女優ウィノナ・ライダーから取られており、若者が安易に曲タイトルを付けた感じも好きです。

スーパーカーが影響を与えたバンド

日本で一番商業的に成功したシューゲイザーバンド・スーパーカーですが、彼らが影響を与えたバンドは少なくありません。

以下のページでスーパーカーの影響を受けたバンドを紹介しているのでご覧ください。

https://howtoguitar.net/archives/1204

スーパーカー活動中にデビューしたバンドも多いですが、解散後に結成したバンドも少なくありません。

今聴いても陳腐化しないことを証明しているのではないでしょうか。

結論:スーパーカーはハイセンス

「‘97の世代」の台頭により、日本の音楽は世界に追いついたと言われることがあります。

その中で、ノイジーなギターサウンドで活躍したスーパーカーは、たしかにシューゲイザーと括られることも多かったのかもしれません。

 

彼らはのちに映画『ピンポン』で『YUMEGIWA LAST BOY』や『Strobolights』、『Free Your Soul』などが主題歌や挿入歌に起用されますが、エレクトロニカへと変遷しても名曲を生み出し続けています。

結局、このジャンルの後続のバンドはみんなスーパーカーが好きですし、商業的に成功したシューゲイザーバンドと言ってよいと、管理人は思いました。

(ちなみに、スーパーカーの5年以上前に「新潟のマイブラ」こと、Paint in watercolourが同じジャンルでメジャーデビューしています)